
国際高分子基礎研究センター設立の背景と経緯
高分子の概念が誕生して以来、80年の年月が流れた。しかし、高分子科学が誕生する以前から、我々の身近には生体由来の高分子物質が存在し、現代では、分子生物学と高分子科学が融合して新しい学問分野を形成しており、今後ますますその発展が期待されている。
一方、材料の側から高分子科学を見ると、石油化学工業の進歩を背景に20世紀後半の「プラスチック時代」を築いてきたが、21世紀の現代では、ポリマー材料は単に汎用の材料としてではなく、多様な高機能を持つソフトマテリアルとしての位置づけが強くなっている。従って、現代社会が直面している資源・エネルギー、医療・健康・環境などの諸問題を解決するためにも、社会との係わりが強いポリマー材料の果たすべき役割は非常に重要である。このような社会的なニーズに応えていくには、これまでの高分子材料技術を単に進歩させるだけでは充分ではない。化学を中心に生物、物理などを含めた基礎科学として、高分子科学を発展させ、それを基にして新しい高分子材料技術のパラダイムを構築していくことが今後の課題である。
このような状況を踏まえ、平成9年6月、日本学術会議研究連絡委員会、材料工学研究連絡委員会から高分子基礎研究の研究体制整備・構築の必要性を指摘した報告書「高分子化学研究の推進について」が提出され、運営委員会において日本学術会議報告として採択された。これを受けて(社)高分子学会においても高分子科学研究体制検討委員会・高分子基礎研究所設立準備委員会が発足された。同準備委員会において、高分子研究体制整備の一環として高分子基礎研究の全国拠点ともなるセンター設置への期待・要望が出された。
以上の背景と経緯のもとに、平成12年4月、東京工業大学に「国際高分子基礎研究センター」が設置されるに至った。